個人の問題から地域の問題へ社会問題化する「ごみ屋敷」
ごみで溢れかえっている家、外から見てベランダに粗大ごみが折り重なっているマンション、その家の住人がごみを貯め込んだりして、片づけることができず景観を乱したり、異臭や害虫の発生、個人宅のごみ屋敷に対する法的対策が進められています。平成21年に国土交通省が行ったアンケートでは全国250市区町村で「ごみ屋敷」が発生していることが確認されています。
各地自体や近隣の人たちが、ごみ屋敷を認識しているにもかかわらず、なかなか片づけが進まないのは、ごみ屋敷の住人本人が「ごみではなく財産である」と主張していて他人が介入できないことと、ごみを処分する場合の回収費用を払えないという経済的理由も大きいようです。心理的に片づけたくても片づけられないという長年の状況から、気が付くとごみ屋敷になっていたというパターンがほとんどです。
「ごみ屋敷化」の原因は人にあり
「ごみ屋敷」の原因は、心理的なものがほとんどですが、きちんと片づけられる人から見ると、そこに住む人の心理状況はまったく理解できないものです。
ごみ屋敷に住んでいる人から見ると、ごみを片付けるように説得をしに来る自治体の担当者や近所の人たちは自分を悪者にする敵にしか見えない、または汚いという現状を他人に見られたくない・自覚したくないため説得に応じることがなく、結局ごみの片づけ交渉に失敗してしまい、ごみ屋敷の解決に至らないケースに陥っているようです。では、ごみ屋敷の住人の心理状況とは、どんなパターンがあるのでしょう。
- ■整理整頓が苦手な人
- 部屋が片付いていないと一般的には不快感を味わうものです。しかし、片づけが苦手な人は、部屋が乱雑になってきてもどうしてもいいかわからない状況になると、不快に感じる感覚をシャットアウトしてしまいます。目に見えているけれど見ないふり、臭くても臭くないふりをします。異常な状態に対して、意識的に無頓着という精神状態を作り上げていってしまいます。けれど、心の奥底では「片づけたい」と思っていることも多いのです。
また、片づけられないという精神状態というレベルではなく、うつ病、ADHD（注意欠陥多動性障害）やADD（注意欠陥障害）、統合失調症、認知症などの病の症状として、注意力や集中力が持続できず整理整頓ができない場合もあります。この場合は、注意したからといって片づけられるようになるわけではありません。本人以外の手助けが必要になります。 - ■片づけられない人の心の闇
- ごみ屋敷に住む人の年齢や職業は20～80代、公務員から会社員、看護師、技術者などさまざまです。仕事が忙しすぎて疲れ切っていたり、家族関係や夫婦関係がうまくいかなくて自分がいる場所への愛着が感じられなかったりするなど、ごみを片付ける意欲がなくなったり孤立していくことがごみ屋敷の最初の原因になっていることがあります。過度のストレスや、離婚や死別、子どもの独立、定年退職による気力の減退、病気などが普通の人がごみ屋敷の住人になってしまうきっかけとなっています。
困るのは大家さんと不動産業者
一戸建てやマンションのオーナー自身がごみ屋敷の住人というケースでなく、賃貸の場合、ごみ屋敷に対する近隣のクレームや、夜逃げなどで放置されたごみ屋敷の対応に頭を抱えているのが大家さんや不動産業者です。
マンション・アパートの場合、隣室などから大家さん宛に「臭い、虫がでる、見苦しい」などのクレームが入ると、不動産会社や管理会社などを通じて住人に対応を促すことになりますが、「すみません、片づけます」といっても一向に変化する様子がなかったりします。注意して片づけるようであれば、もっと早くに片づけているでしょう。長期間、ごみ屋敷状態が続くと、契約によっては退去勧告もできますが、その後の処理も大変です。何度交渉しても変化が見られない場合は、大家さんが費用負担して、粗大ごみ回収業者に片づけを依頼することもあるようです。
また、夜逃げなどで住民の所在がわからなくなり、室内を確認するために立ち入るとそこはごみの山だったというケースもよくあります。生ごみなどが処分されていない場合は、ゴキブリなどの発生源となって他の部屋へ迷惑がかかることもあり、清掃費を出して早急にどうにかしなければいけないなどの例もあります。